2015年2月12日木曜日

油圧ショベルのブームシリンダー修理

記念すべき第1回目の投稿です。

ホームページを立ち上げてからブログに何を書くかいろいろ迷っていましたが、
先日油圧ショベルのブームシリンダーからの油漏れがひどくなってきたので、
それを修理した様子を書くことにしました。

メーカーにシリンダー修理(各所オイルシールの交換)を依頼したところ、
残念ながら材料・工賃共に予算を大幅にオーバーしたため、自分で修理することに。

材料(シリンダーシールキット)は重機関係の部品を取り扱う問屋さんから仕入れました。
純正と同等品ながら値段は純正の4割弱でした。
(一部メーカーでしか出していない部品もあります)


平成5年 コマツPC200-5型(0.7m3クラス) 22年選手ですが、まだまだ現役です
 
ブームシリンダーからの油漏れ状況
 
シリンダーヘッドのダストシール部分が傷んでいます
 
ブームシリンダーシールキット
 
シールキットの中身
 
 
作業開始です。
(作業途中で一部写真を撮り忘れたため、右側のシリンダー修理の写真と左側シリンダー修理の写真が混ざっていますがご容赦ください)

まず、油圧配管を解体します(破損や紛失を考慮して、油圧配管接続部のOリングを用意しておいた方が良いでしょう)。それと配管にかなりの圧力がかかっているので、作動油の噴き出しに注意。
目に入ると危険なので保護メガネを着用した方が良かったです。
あとヘルメットをかぶるときにはあごひもをしましょうね。
写真には写っていませんが、下にブルーシートを敷き、オイル受けのバケツを置いています
 
同様にグリス配管や灯火類も、予め解体しておきます。
 
シリンダーヘッドのボルトを外します。結構きついのでソケットレンチをパイプで延長して緩めます。
油圧ショベルの大きさによっては、シリンダーヘッドがネジ式になっているものもあるので、
その場合はフックレンチやパイプレンチなどでヘッドを外す場合もあります
 
シリンダーヘッドを外した状況
 
さあこのままロッド(+ピストン)とシリンダーケースを外して
シール類の交換にかかろうと思いきや、ケースが外れません。 
            ↓ぶら~ん

中をみると「カラー」という部品が引っかかっています。
シリンダーケースを回しても取れない、上下に揺さぶってみても取れない。
写真はとっていませんが、軽トラで引っ張ってもみましたが、取れない。
もしくは「カラー」なる部品の外側にネジが切ってある特殊な構造なのではないか、
など悩むこと1時間弱。

弊社の社員がどこかに電話して聞いたところ、特殊な構造ではなく、ただはまっているだけのはず、とのこと。ではゆっくりレバーブロックで引っ張ってみようということになりました。
(ちなみに引っ張って取れたとしても、後でどうやってはめるの、とここで少々悩む)
引っ張ってとれた時にシリンダーケースとロッドが落ちないようにクレーンで吊っています。
(ロッドに直接スリングをかけていますが、傷防止のためウエスなどをかませた方が良いでしょう)
 
やったー。とれました!

カラー、ピストンなどの様子。あまり傷みは見られません

ロッド先端のナットの状況。これがものすごく固く締まっているらしいという話は聞いていました。

じゃーん。そこで用意しておいたのがこれ。900mmのパイプレンチ。 

最初3人がかりで緩めようとしましたがびくともせず。別のショベルで慎重に引っ張ることにしました。修理する側のショベルから反力を取りながら、パイプレンチを延長してスリングをかけます。
(ナットが回ったときにスリングがパイプから抜けないように足場用のパイプで延長しています。また、ナットが傷まないようにウエスをかませています)

外したナットがこれ。緩まないように内側の一部が樹脂でできています。
本来は(ねじ山が若干緩くなるため)これも新品にする必要がありますが、えらく高いので(1個3万円弱)却下。元のナットを再利用することにしました。緩み止め剤のようなものも塗ってありました。

解体した部品は順番・上下を間違わないように保管 

ピストン部分がこれ。古い部品を外していきます

新しい部品に交換

奥のカラーについているテフロンのような白く見えるリング(バックアップリング)などは傷みが少なかったのと、(材質的に伸びないため)古い部品を外すと新しい部品を入れられなさそうだったので、交換していません。(もしかするとお湯などの中に入れて柔らかくしてからはめ込むのかもしれません)

シリンダーヘッド側の状況がこちら。
古い部品を外します。写真には写っていませんが、ダストシールを外す前に、金属製の外れ止めのリング(C型になっている)を外す必要があります。再利用が可能ですが、劣化していたり解体時に破損することを考えると予めメーカーから取り寄せておいた方が良いと思います(07179-13099 スナップリング)。ダストシールは金属と樹脂でできており、かなり固くはまっているので壊さないと外せません。

各種リング・シールを外した状況がこちら。この後ウエスで清掃します

今回問題となった新旧ダストシールの写真がこちら
(古いものは外すときにこじっているので真円ではありません)
かなり傷んでいたのが分かります

シール・リング交換後のシリンダーヘッドの状況がこちら
内側の下に見えるブッシュは傷みが少ないのと、交換に圧入機械が必要になるとのことで交換していません。

シリンダーヘッドの外側のOリングも交換
先程と同様の理由で白色のテフロンのようなリング(バックアップリング)は交換していません

一部シール類は交換しませんでしたが、交換できる部品は全て交換し終わったので、再度組立。
解体するときにロッド(+ピストン)とシリンダーケースが外れなかったので、組み立てるときも固いはずだと思いましたが、なぜか難なくはまりました。めでたしめでたし。
(ちなみにシリンダーヘッドをシリンダーケースにはめる際は、互いのボルトの穴の位置を合わせてからはめると手戻りがなくなります)

修理後のダストシールの状況がこちら。あと20年はもつでしょう(笑) 
 
 
写真では省いていますが、ここで最初に外した油圧配管類・灯火類・グリース配管類を復旧します
 
シリンダーのエア抜きを行います。
油圧配管を少し緩めて云々かんぬん、かと思いきや意外と簡単。
このシリンダーはシリンダーヘッドやカラー、プランジャーに穴やくぼみがついていて、シリンダーヘッド側にもうまく作動油が回る構造になっていました。(別の方が作成したHPを拝見しますと、メーカーや機種によっては組み立て前に予めシリンダーヘッドに作動油を封入する必要があったり、エア抜きの方法が異なるものもあるので注意してください)
 

エア抜きが終わったら、作動油の量の確認並びに補充をします。コマツの点検姿勢は下記の通りです。点検姿勢をとった状態でタンクに入っている作動油の量を確認します。
他メーカーは点検姿勢が異なりますのでご注意ください。


あとは各所グリスアップ、試運転をして作業完了です。

作業は3人で1本目の修理が3時間半、2本目の修理が2時間でした。
使用した機械は移動式クレーン車1台、油圧ショベル1台でした。
(あとワイヤー・スリング・シャックル・レバーブロック・ウエス・バケツ・各種工具類)
弊社ではシリンダー修理は初めてなので大変でしたが、重機をたくさんお持ちの方は1度経験しておくと良いかもしれませんね。


ちなみに今回の部品明細書です。作業後に撮った明細書の写真なので油で汚れていますがご了承ください。こういった明細書は今ではディーラーや修理工場の一部でしか入手できませんね。
 

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